10月から始まった日曜ドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」。今期のドラマで私が個人的に一番注目しているドラマ。妻夫木聡主演、早見和真の同名小説を映像化したもので、競馬の世界を舞台に、ひたすら夢を追い続けた熱き大人たちの物語。家族や仲間たちとの絆で奇跡を起こしていく、人間と競走馬の20年にわたる壮大なストーリー。
先日、第一話を視聴して、幼少期に過ごした団地のそばにあって、何度も遊びに行った競馬場を思い出した。

競馬場といっても、そこは「ばんえい競馬場」。
ばんえい競馬とは、北海道の開拓時代に農耕馬の力比べとして始まった、世界で唯一、そりを引くスタイルの競馬で、現在は北海道帯広市の帯広競馬場でのみ開催されている。
かつては市営競馬を運営する北見・帯広・旭川・岩見沢4市で開催されていたが、売上の伸び悩みによる赤字運営から、ホッカイドウ競馬が1997年に撤退、市営のばんえい競馬も2006年度限りで撤退したため、わたしの住んでいた岩見沢で行われていたばんえい競馬も2006年10月2日をもって休止された。
私の暮らしていた道営団地は岩見沢競馬場から近く、ばんえい競馬が開催される土日の朝、馬の鳴き声で目を覚ますこともよくあった。競馬場までの道路がばんえい競馬が開催される日は、とても混み合っていて、馬の鳴き声と外に出たときの車の渋滞で「今日は競馬の日だ。」と認識していた。私が住んでいた団地の前の敷地で、今は住宅が立ち並んでいるところに林があり、歩いて15分ほどだろうか、その林を抜けると競馬場の入り口があった。たまに父が休日に競馬に行くときに連れて行ってもらって、林で歩きながら木の実やなんかを拾ったりして競馬場に行く。妹と二人で場内の公園で遊んだり、場内に散らばっているハズレ馬券の、折れ目や汚れのないものを探して拾ったりしていた。そうやってしばらく遊んで、飽きてくると父のいるところに戻って、食べ物を買ってもらったり、時には1レース分の馬券を買ってもらったりしたこともあった。馬券の買い方も、馬の良し悪しも全くわからないから、たいていは自分の誕生日の数字で買ってもらう。一度だけ当たったことがあったが、100円分しか買わないから大した配当にはならない。それでも当たると嬉しかったし、自分が買ってもらったレースだけは真剣に見て、5と1の馬を応援した。たしか、千円に満たない配当金でお菓子を買ってもらった。

今は北海道グリーンランドで開催されている花火大会も、岩見沢競馬場があったときは、そこで開催されており、そのころは毎年いつもの林を家族みんなで歩いて通って、花火大会に行った。何度か祖父母も一緒に行った記憶がある。いつもの林を抜けて行くとき、行きはまだ薄明るいのだが、帰りは真っ暗で、懐中電灯を持って歩く。怖いけど、みんな一緒だし、いつもは明るいところを夜歩くことはとてもワクワクした。
家から近かったので、行かなくても家から花火は見えるけど、やはり会場で見ると迫力が違う。いつもは競馬を見る広い競馬場で大勢の人が花火を見ていた。音が大きくて花火が始まってすぐは耳を塞いでいたのを覚えている。花火大会で学校の友達や、近所の人たちと偶然会ったりすると、いつも会ってる人たちなのに、こんなに多くの人の中で会えたことが嬉しくてテンションが上がった。
競馬場がなくなり、歩いて通った林もなくなってしまったが、ドラマを見たことでそれらの思い出がとてもはっきりと蘇った。ぼんやり聞こえる朝の馬の鳴き声、自分の背丈より高い草木を抜けて歩いた林、競馬場の公園の遊具、広い場内、紙吹雪みたいに待っていたハズレ馬券、そして大きな花火と大勢の人。
今も帯広でのみばんえい競馬を見ることができる。そのうち帯広でも見られなくなってしまうかもしれない。次の夏にでも夫と帯広に行く機会があったら、久しぶりにばんえい競馬を見てみようか。そして、夫と1レース分ずつ馬券を買おう。私は5と1で。

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