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きぬえの読書感想文③

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私の本棚読書
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池袋ウエストゲートパーク第19弾「神の呪われた子」

今回は石田衣良さんによる人気小説シリーズ「池袋ウエストゲートパーク」(IWGP)の中から、文庫としては最新刊である「神の呪われた子」をご紹介。

このシリーズは、第1シリーズ10巻、第2シリーズがこれまでで9巻、この他に番外編・外伝も3作ある。
第1巻は1998年に刊行され、2000年には宮藤官九郎脚本、長瀬智也主演でテレビドラマ化されている。ドラマには他にも窪塚洋介や山下智久、妻夫木聡などの豪華キャストが出演し、社会現象にもなった。のちにアニメ化もされている。
私もドラマでこの作品と出会い、原作を読みたくなってこのシリーズを読むようになった。

このシリーズは全編主人公のマコト目線で語られる。
工業高校を卒業して、実家の果物屋の手伝いをしながら、雑誌のコラムを書いて生活しているマコトが、池袋で起こった身近な問題をどうやって解決していくか、まるでマコトが書くコラムを読んでいるような感覚。
毎回新しいシリーズを読み始めるたびに、
「マコっちゃん、久しぶり~!タカシも相変わらずかっこいいね~。今回はどんな話しを聞かせてくれるの?」と、本当に久しぶりに会ったような気持ちでページをめくる。
そして、またマコト達に会えたことが嬉しくてたまらなくなるのだ。

舞台は池袋の西口公園。
池袋西一番街にある果物屋の息子であり、池袋のトラブルシューターであるマコトが若者たちの光と闇を描いた青春群像劇。
マコトの幼馴染のタカシが率いるGボーイズと協力したりしながら街の問題を解決していく。
連続殺人、薬物、引きこもりなど、そのときどきに起こる社会問題を反映したシリアスでありながらも疾走感のあるエピソードが展開されている。
若者たちの時には熱く、時には切ない日常を描いた名作シリーズ。
そしてそのシリーズの文庫本最新刊が「神の呪われた子」。
この本には表題作の他に3篇が収録されている。
今回はその中から表題作である「神の呪われた子」。

この作品は「宗教2世」をテーマにした物語。
女子高生のルカは新興宗教にのめり込んだ母親からネグレクトされている「宗教2世」。
雨の中でパンフレットを配る彼女と見つけたマコトと、自身も宗教2世の経験を持つ子ども食堂の主催者アズ。
教祖の花嫁候補として差し出されることになったルカをマコトと幼馴染のタカシが救おうと立ち向かう。

子ども食堂のアズは自身の経験からルカのことを親身になって考える。
「私と同じなんだ。だから同じ境遇の子を放っておけなくなる。」
そうして子ども食堂を主催しているアズは、ルカも児童福祉や教育にかかわる大学に進学したいと聞き呟く。
「人には可能性がいくらでも開けてるなんていうけど、一度そういう経験をしちゃうと、もうよそ見なんてできなくなるんだ」。
可能性とかそんなことを考えるまでもなく、自分と同じ思いをする子供を無くしたいと思う気持ちが一番先に来るのだろうと胸がぎゅっとなる。
つらい経験をした人の方が、より人に優しくなれるという。
そんな経験も苦労もしたくてするわけじゃないし、誰もが避けて通りたいけれど、そんな経験でもそれで人の気持ちに寄り添えるようになるのであれば、無駄じゃなかったのかなと、私も時々考えたりする。
アズはだから「強くて優しい」人として私にも映ったのだろう。
マコトにもタカシにも作れない、子どもたちの未来を守るアズ。
宗教2世で育ち、腕はリストカットの跡でいっぱい。抗うつ剤を飲みながら子ども食堂で毎日こどもたちに食事を提供し続けている。
本人は自分のやっていることを「復讐みたいなもの」と言い、子どもたちのためなんかじゃなく、依存しているのは自分で、それで自分が元気になるのだからきっと地獄に落ちると言う。
そんなアズにマコトは本当の気持ちと言葉で真剣に向き合う。
そういう言葉だけが本当に傷ついた人を救えるのではないかと思う。
マコトの「もうだいじょうぶ。」が、たくさんの人を救ってきた。


そんなシリアスな部分もありつつ、読んでてスッキリしたり、クスッと笑えるところもあるのがたまらない。
ルカが花嫁候補の面接に行ったときの様子の動画のサムネイル。
マコトがざっと考えた適当なタイトルも、下世話で趣味が悪いのが効果的で痛快。
タカシも毎回「それな!」と言いたくなるようなことをサラッと、そしてはっきりと言う。
「学歴なんて頭のよしあしにさして関係ない。」
「おれたちは真実より耳当たりのいい嘘のほうが好きだ。」
「そこにつけこむ悪党がいつの時代にも存在する。」
学校では教えてくれないことを2人はいつも私に教えてくれる。
マコトは「地獄や悪魔の恐怖を吹き飛ばすには、笑い声が最高の武器になる。」と。
笑うことが難しいときが人には幾度となく訪れる。
病気の治療や、高齢者の孤独を防止するための集まりなどで「笑う」ということを重要視しているのは、笑うことで確実に効果が出ることが証明されているからだ。
笑うことができなくて、つらくて暗い闇の中で苦しんでいても、人の優しさに触れたり、温かいものを思い出してふと自分が笑えたとき、「あ、大丈夫だ…」と思える。
マコトはその武器を優しく与えてくれる人なのだと思う。

本当の強さとは何か。
きれいごとでは済まない問題も多い世の中で、権力やお金ではないもっと根っこの大切なものに気付かせてくれる物語。

現代の様々な問題をマコトとタカシがひっそりと解決していくこのシリーズ。
ドラマは観たけど小説は読んでいないという人はぜひ一度手に取ってみてほしい。
キャラクターの印象もちょっと違ったりするけれど、ドラマにも引けを取らないぐらいかっこいい。
長いシリーズの中で、以前に出てきたキャラクターがふいっと出てきたりするのも嬉しい。
私の推しは断然タカシ。(マコトじゃないんかい!)
ドラマのタカシとはかなりかけ離れたイメージだが、タカシの詳しいエピソードが知りたい方は「池袋ウエストゲートパーク青春篇」の「キング誕生」をぜひ。

この記事を書いた人
きぬぶん

◆サイトの運営責任者
◆きぬえの宣伝社 代表社員
◆不定期でコラムなどを執筆中

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