天使なんかじゃない

作者は矢沢あいさん。雑誌「りぼん」で1991年9月号から1994年11月号まで連載された漫画です。
当時私は中学生。「りぼん」は小学生のころから毎月買って読んでいました。
「ちびまる子ちゃん」、「ときめきトゥナイト」、「星の瞳のシルエット」、毎月全部楽しみに読んでいましたが、長年「りぼん」を愛読していた中で一番大好きだった漫画が「天使なんかじゃない」でした。
この作品が連載される前から矢沢あいさんの作品は、絵やストーリーが好きで、特に楽しみに読んでいました。「天使なんかじゃない」の前に連載されていた「マリンブルーの風に吹かれて」も大好きでした。「マリンブルーの風に吹かれて」の連載が終了してガッカリしていたところに矢沢あいさんの新連載が始まると知り、首を長くして待ち、迎えたのが「天使なんかじゃない」でした。
初回から夢中になりました。完全にはまリました。
毎月、「りぼん」の発売日を楽しみに待って、特に「天使なんかじゃない」は、次号が発売されるまでに何回も何回も繰り返し読んで、発売日が来るのを待っていました。
そんな思い出深くて、大好きな本作をご紹介したいと思います。

お話の舞台は創立されたばかり、できたてホヤホヤの高校です。
その第一期生である冴島翠。明るくて人気者の翠は生徒会役員候補になります。同じく立候補者の一人で、翠が以前から存在を気にしていたリーゼント頭の男子生徒、須藤晃。この二人と、生徒会メンバーである麻宮裕子、滝川秀一、河野文太との三年間の高校生活の中で生まれる友情や恋愛を描いています。
連載当時の私は、この作品に出てくるあらゆるものに憧れました。
晃はかっこいいし、翠は明るくてかわいいし、生徒会はみんな仲良くて楽しそう。
学校も新しくてまだ一年生しかいないから、生徒会で企画して、生徒みんなで考えて、楽しそうなことは全部やっちゃうみたいなところが楽しそうでワクワクしました。
私の個人的な「推し」。
まず男子部門はダントツで晃です。昔からちょっとヤンチャな感じの男の子が好きだった私にとって晃はもうかっこよくてたまらなかったです。
そっけないのに本当は優しくて、そういう不器用なところがドンピシャで、こんな人が本当にいたら間違いなく100%好きになっていたでしょう。
そして、女子部門では麻宮裕子(マミリン)です。
素直で明るくてみんなに愛される翠も本当にかわいいし、憧れます。
そんな翠とは正反対と言っていいほど素直じゃなくて、頼ったりすることも苦手なマミリンが私は大好きです。

最初は翠みたいなタイプが苦手で、なかなか心を開かなかったマミリンも、翠がめげずに素直にまっすぐ自分に向かってきて、迷いなく自分を「大切」と言ってくれる中で、だんだん翠にも心を開いていきます。「あんたみたいな友達はもう二度と出来ないかもしれない。」と、そんな友達に出会えるって素敵ですよね。素直じゃない子のまっすぐな言葉はグッときます。
矢沢あいさんはそれまで「男の子はかっこよくていいんだけど、女の子があまり魅力的じゃない」と言われていたそうで、今作で今までなかった「前向きで明るい女の子」を初めて描いたんだとか。
誰もが憧れてかわいいと思える女の子を主人公にしたのは正解でしょう。
でも、やはりマミリンみたいな女の子が作者が得意とするキャラクターなのかなと思えるほど、その繊細な感情をとても上手に描いていると思います。
もちろん、他のキャラクターもそれぞれ本当に魅力的で、誰一人欠けても成立しないと思えるほど愛おしく思えるのは、作者のキャラクターへの愛情からくるものなのでしょう。

読むたびに「かっこいいな~」とか「なんでそんなことするの?」とか、いつもキャラクターたちに感情移入して、泣いたり笑ったりして読んでいました。
この作品ぐらいから矢沢あいさんの絵のタッチも少し変わってきた気がします。
それと同時に登場人物のファッションや髪型もどんどんおしゃれになっていって、そういう部分もこの漫画の楽しみでもありました。
あと、たまに昔の作品のキャラクターがチラッと登場したりするところも楽しみでした。
「あの漫画のあの頃と同じ時系列なんだ!」と感じることで、過去作とも久々に出会えてテンションが上がったものです。
そんな当時の感覚を思い出すと同時に気付いたのは、変わらない自分でした。
「りぼん」掲載から30年以上経ち、私も大人になって働いたり結婚もしましたが、この作品を読み返した今もそこには14~5歳の頃の私がいました。
私も悲しいことや辛い事を乗り越えて、それなりにいろいろなことを身に付けて大人になったつもりでいましたが、当時と何も変わらないワクワクと感動がありました。
そして、そんな風に変わらずに感じられることがとても嬉しく、幸せだと感じます。
今でも、少女漫画を読んで、キュンキュンしたり、ドキドキしたり、感情移入して泣きながらページをめくったり、そんなふうにこの作品を読んでいた当時の自分に戻れるって嬉しいことですよね。
この作品は生徒たちはもちろん、学校の先生や、家族もとても魅力的です。
ただの学園ものかと思いきや、話が進むにつれて見えてくる、複雑な関係や、それぞれの想いや感情が物語を形作っているのだと思います。
恋愛、仲間、家族、たくさんのつながりの中でそれぞれが成長し、高校生という時期を過ごしていき、そしてどんな卒業を迎え、大人になるのかを見届けている気持ちになれる作品です。
矢沢あいさんは現在病気療養のため、連載中の「NANA」を休載しています。
体調管理をしながらイラストを描いたり、展覧会への協力をしたりといった仕事を少しずつ行っているそうです。
「NANA」の結末の筋書きは作者の中で決まっているとのことなので、無事に体調が回復されたら「NANA」がどのように完結するのか、私を含めたファンは見届けたいと願っているのではないでしょうか。

さて、今回の「天使なんかじゃない」。
私がこの作品を大好きであることを知っている夫が、数年前にプレゼントしてくれた「完全版」を久しぶりに引っ張り出して読んだら、「大好き」と「懐かしさ」と「あの頃の自分」が溢れてしまい、どうしても紹介したくなってしまいました。
高校生のころの自分に会いたくなったら、また翠や晃に連れて行ってもらおうと思います。

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